家族ってなに

家族であるとはいえ他人だということを忘れている人があまりに多くないですか。血が繋がっているだけでどうして特別な関係みたいになってしまうのかよくわからなくて、家族という関係の心理的な距離が近いというのは一緒に過ごした時間が長いからであって、例えばこれは友だちとかと同じなのだと思う。友だちといくら仲良くなったって他人であることを忘れてしまうことなんてあまりないと思うのだけど、どうして家族という関係になった瞬間に礼儀とか感謝とか距離感とかそういうのが全部抜け落ちていってしまう人が増えるのだろうね。家族だからなにを言ってもいいわけではないし家族だからって気を遣わなくていいわけではないでしょう。自分が生んだ子供だからってなにがわかるの、「わたしはあなたたちではない」、あなたから生まれてきてあなたたちが育てたのだろうけれどわたしはあなたたちではない、自分ではない人間はどう考えたって他人でしょう。どうして他人に対する態度と家族に対する態度がそんなにも違うの? ほんとうにびっくりしてしまうよ。わたし個人の話みたいだけれど別にそういう訳ではない。うそ。こんなに感情的になっているのに自分の話でないわけがない

 

今日も家にいてなんで生きているのかよくわからなくて泣いてしまった。別に何か言われたとかそういうわけではない。そうやって生きていくのが実は楽なのかもしれない、存在するべきではない人間だと自覚して生きなきゃいけないのだよと自分に言い聞かせるのがいちばん楽なんだなって何年も思って生きてる

 

 

私と弟とは、ほとんど言葉をかわすことがなかったが、そうした言葉の貧困さは、言葉の貧困という状態のすべてがそうであるように、罰とか不幸とかといった観念あるいは一切の観念というものに対する清浄さを意味していた。

___金井美恵子「窓」『単語集』