2020.10.25

大体、傍若無人、冷酷無比という場合も、潜在的には脅威を感じているので、それで反動的に余計にそのような態度に出るのであると解することも可能である。すなわち、人を食った態度、呑んだ構え、なめた振りというのも、そのような拾好をすることによって逆に相手を威職しようとしているのだということができるであろう。しかしこのような手段、すなわち無視や威嚇が成功しないとなると、何か別の手段に訴えなければならない。そしてその時用いられる方が相手にとりいり、また相手をとりこむことである。これは精神分析で同一化ないし摂取と呼ばれている心理機制に相当するが、ここで「とりいる」という言薬がすでに「甘えの語彙」のところでとりあげたものであることを想起してほしい。また、「とりこむ」ことは、精神的に食い呑むことであるということができる。このことから明らかなように、同一化や摂取は、甘えの世界の住人にとっては最も馴染み深い心理機制であると考えられるのである。

___土井健郎『「甘え」の構造』

 

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脅威だったんだねえ