2020.12.15
エレベーターに乗って、二十五階に着くやいなや、わたしはいちばん近くの窓へと狂ったように突進し、そこから身を投げて通りへ墜落した。わたしの落ちたのは一本の豊かな木の葉っぱのなかで、枝やら葉やらがふわふわするいちじくの木みたいだった。ばらばらに飛び散ろうとするわたしの肉体が、思い出のなかに散っていった。
__サンチャゴ・ダボベ(一九四六)
マレルブは来世のあることをあまり確信していなかった。それで天国と地獄の話を聞くと、いつもこういうのだった。「ぼくはほかのみんなと同じように生きてきた。みんなと同じように死にたい。みんなのいくところへいきたい」
__タルマン・デ・レオ『小話』二十九
___ホルヘ・ルイス・ボルヘス、アドルフォ・ビオイ=カサーレス/柳瀬尚紀訳『ボルヘス怪奇譚集』
ここからは古代と書かれし矢印に従ひてゆく死なないわたくし / 井辻朱美