励ましのコラージュ
親と子の関係について
「大人になってから子どもに自分がやってきたことを肯定してもらえないと、いざ対等な状態になった子どもに見捨てられることになるよ。感謝されないし、仲良くしてもらえない」
この言葉が出てくるきっかけなったのが下のやりとり
「ねえ、子育てとかしつけの正解って何かな?」
「え?」
「正解かどうか、わかるのっていつ? その子がいい子になること? 礼儀正しくてちゃんと大人の言うことを聞くような」
「わかんないけど、子ども時代よりもっと先じゃない? 人に迷惑をかけない立派な大人になること、とか」
「じゃあ、社会人?」
「まあ、最終的には大人になってからなのかな」
(中略)
「もちろん、人に迷惑をかけない大人になることは大事なんだけど、最近、子育ての正解ってそこにないんじゃないかと思うこともあって」
「じゃ、どんなことが正解なの?」
「成長した子どもが、大人になってから親の子育てを肯定できるかどうか」
___辻村深月「ママ・はは」『噛み合わない会話と、ある過去について』
帯に「救われるか後悔するかは、あなた次第。」とあって、救われも後悔することもないでしょうなんて思って読んでいたけれどそんなことはなかった。
面白い親の形
「恋人が入れ替わるように親も入れ替わる世界の方が面白い? 誰かの親になりたいと望んだ者が二人以上いたら目当ての子どもの心をつかむために争うとかね」
___松浦理英子『最愛の子ども』
考えたこともなかった! これは子どもを産むことのいろいろな問題を飛び越えられてすごい。あと愛される子どもの数が多くなるのがいいなと思ったけれど、
親に好かれていることと、理解されることは、きっと全くべつの話なのだ。
___島本理生『週末は彼女たちのもの』
ということもあるらしいので親が子を愛したら子はそれで幸せ、とはいかないのだね。
これは愛されなかったことがトラウマになってそんなひねくれた性格になったのではないか、と指摘された人のことば。
完璧な親なんかいない。親だって、四苦八苦しながら生きている。その親も、逃げ場がなくなれば自分もトラウマを背負っていると告白し始めるだろう。結局は責任のなすりあいだ。
この前に、「何もかもを親から受けたトラウマという形で解決してしまうつもりはない」と言っている。
親からの愛は束縛にもなり得るよねという小説から
「親にこんな事情があるから理解しろなんて子どもには無理です。子どもは優しくされたくて生まれてくるんじゃないですか。理解するのは長く生きてる大人のほうじゃないですか」
(中略)
「そんな大人には絶対になりたくないです」
これはそんな親にはなりたくないではなくてそんな大人にはなりたくないと言っているね。この子みたいに反逆の気持ちを持てたらいいけれど、持てないのってもっと悲惨なのではないのかなと思うこともある。
母に死んでしまえと思ったことは一度もない。嫌いだと思ったことも一度もない。母に嫌われる自分が嫌いだった。
___湊かなえ『母性』
今まで引用したもの全部子ども側のきもちだね。親になる人の気持ちは? 親にならないとわからないよね、きっと。むずかしい。
川上未映子の作品の大きなテーマに出産がある、いろいろな作品でたくさんのことを書いていてなにを選んだらいいかわからないので、「それってつまり親になるのに親が影響してくるということだ」となった文。
それは基本的に心根が明るい人であるというか、生きていることに肯定感を持っている人のことで、つまり「生まれてきてよかったなあ!」と自分の人生にたいして思えている人のことで、これがないと、子どもをないところからつくるなんてすごいこと、なかなかできそうにないのだけど、どうなんだろう。
___川上未映子『りぼんにお願い』
言い切るのではなくて「どうなんだろう」とくくるところが川上未映子らしくていいね。
親子関係について本に救われた人って結構いるのではないのかな。湊かなえの『母性』は人から借りて読んだのだけど、あまりにも心がふるえたので自分で買った、そのあとまだ一度も読んでないのだけどね! そういうこともある。高校1年生のときのお話。
番外編。親を引き合いに出したおもしろい例え。
オーストラリアで生活する韓国人が、オーストラリアの警察から差別を受けて、ある事件に対して自分に非がないと言う説明を聞いてもらえないまま裁判沙汰になったけれど、事実なにも悪いことはしていないのであっさり裁判が終わったなんていうできごとのあとのことば。
そんな経験をしてからは韓国に対するありがたさも感じたんじゃないの? って言うなら、別にそうでもない。先生に叱られたからって両親のことをありがたく感じるだろうか?
___チャン・ガンミョン『韓国が嫌いで』
この主人公、ほんとうに強い。日本があまり好きではないからいつか出ていけるかなと思って留学した気持ちがあったことをポジティブに思い出させてくれた。もっといろんな人の手に渡ればいいのにと思っている本!